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天気予報の評価(降水)

　「天気予報の適中率は８３％」ということがしばしば言われます。これは、朝５時発表の天気予報において、「今日（06時から24時まで）」の降水の有無の予報を行った結果、全ての予報の中で「降水が有ると予報して実際に降水が有った場合」と「降水がないと予報して実際に降水がなかった場合」の割合がおおよそ８３％であることからこのように言われています。これは全国の気象台（５６ヵ所）が発表した予報に対する評価です。

　表と式を使って書くと下記のようになります。

予　報

降水あり降水なし

実況降水ありＡＢ

降水なしＣＤ

　適中率＝（Ａ＋Ｄ）／（Ａ＋Ｂ＋Ｃ＋Ｄ）

　ちなみに、「雨が降ると予報したが実際には降らなかった」場合を空振り、「雨が降らないと予想したが実際には雨が降った」場合を見逃しと呼び、それぞれ次の式で求められます。
　空振り＝Ｃ／（Ａ＋Ｃ）
　見逃し＝Ｂ／（Ｂ＋Ｄ）
　下の図は全国の２０００年の「午前５時発表の『今日』の予報の降水の有無の適中率」です。関東甲信地方や東海地方では、あまり雨の降らない冬の時期は適中率が高く、梅雨の時期のように雨が多い時期は適中率は低くなっているのが分かります。一方、冬でも降水のある北海道や沖縄では一年を通してあまり大きな変化がありません。

全国の降水の有無適中率(０５時発表予報)

　このように降水予報の評価一つ取っても、季節や地域によって予報の困難さの度合いが違うため、正しく予報の評価を行うためには、その時の降水率や気候値と比較して評価する必要があります。

　上の評価は、降水が有るか無いかだけの予報に対する評価でした。実際に天気予報を使うためには、その雨がいつ・どのくらい降るかといったことが分かる必要があります。
　このため、気象庁では分布予報という予報を発表しています。これは、予報区を２０ｋｍ格子間隔に分け、６時間毎の降水量の階級を予報するものです。こんな図をテレビで見たことが有ると思います。

　これは本州中央部の降水量の分布予報を示したものです。

　この降水量の分布予報も評価を行っています。その一つは、上と同じ降水の有無の適中率です。下の図は、２０００年の１年間に朝６時と夕方１８時に発表された関東甲信地方の分布予報の降水の有無の適中率です。横軸は「月」ではなく、予報時間帯を示しています。一般に、予報時間が先になればなるほど予報は難しくなりますので、適中率が下がります。

降水の有無適中率(０６時発表予報)

降水の有無適中率(１８時発表予報)

　「今日」を対象とする予報と比較すると、３時間毎の予報になると、予報の難しい８月や９月でも適中率が８０％程度あり、適中率が上がるのが分かります。これは、対象となる時間が短いために「期間内には降らないだろうと予想していたが雨の降り出しがずれて降ってしまった」ということが少なくなるためと推察できます。
　図を見ると、８月や９月の１８時、２１時を対象とした予報の精度が悪いのが分かります。これは、いわゆる夏の「夕立」の予報が難しいということでしょう。

　分布予報では降水量を階級で表現していますので、その階級の一致率の評価も行っています。表で書くと次のようになります。

予　報

1～5ﾐﾘ 5～10ﾐﾘ 10ﾐﾘ以上

実況 1～5ﾐﾘＡＢ

5～10ﾐﾘＣＤＥ

10ﾐﾘ以上ＦＧ

　階級一致率＝（Ａ＋Ｄ＋Ｇ）／（Ａ＋Ｂ＋Ｃ＋Ｄ＋Ｅ＋Ｆ＋Ｇ）

　下の図は、上の図と同様に、２０００年の１年間に朝６時と夕方１８時に発表された関東甲信地方の分布予報の降水階級一致率です。

降水量の階級一致率(０６時発表予報)

降水量の階級一致率(１８時発表予報)

　降水の有無の一致率に比べて、特に７～１０月の成績が悪いのが分かります。これは、雨量の多くなる時期と一致していて、降水量予報の難しさが分かります。その中で、８月の朝３時を対象とした予報の成績が突出して良くなっていますが、これは、ちょうど夕立が収まり、最も大気の状態が安定している時刻なので、雨が降ることが少ないために成績が良くなっているのだと思います。

　気象庁ではこのような評価を行い、この評価結果が向上するように技術開発や業務改善を行っています。

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