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静止気象衛星「ひまわり」の話



GMS-5

 テレビなどでお馴染みの静止気象衛星「ひまわり」は東経140度,赤道上空約36000kmの位置にあります。こんなに遠くにいるのは,この高度で地球の周りを地球の回転速度と同じ速度で回ると,回る事によって生ずる遠心力と重力がちょうど釣り合うため,地球から見て東に行ったり西に行ったりしなくて済むためです。地球と同じ回転速度で回っているために,地球にいる人から見ると常に同じ同じ位置に見えるわけで,このため「静止」気象衛星というわけです。

 普段ごらんになっている気象衛星の画像は,気象衛星写真という言葉から普通のカメラのように「バシャ」とシャッターを切った写真があって,それが衛星から電送されてくるというイメージを持っている方もいるかもしれませんが,それは違います。

スキャン


 「ひまわり」は地球の周りを周ると当時に,1分間100回転の速度で自転して姿勢制御を行っています。衛星写真を撮るカメラに当たる部分(放射計と言います)も一緒に回っていて,一度に写真を撮るのではなく,上の図のように少しずつの幅で北から順にコピー機やスキャナーと同じようにスキャンしていきます。そのスキャンの幅は1回転につき0.008度の視野角で,25分かけてスキャンしますので,
 0.008度/回転×25分×100回転/分=20度
の視野角になります。上空約36000kmから地球を見ると地球の視野角は17.4度ですから,十分北極から南極までスキャンできることになります。

 スキャンする放射計には可視光を捕らえるものと赤外波長を捕らえるものがあり,可視光だと普通の人間の目で見るのと同じように見え(白黒写真ですが),赤外だと温度の分布を見ることになります。

 通常,赤外線写真というと暖かいところが白く見え,冷たいところが黒く見えますが,衛星写真はこれを反転していて,温度の低いところが白く,温度の高いところが黒く見えます。雲は高いところにありますから,温度が低く,白く見えるわけですね。

 赤道直下での分解能は可視光で1.25km,赤外画像で5kmで,可視画像の方が細かいところまで見えて面白いですが,夜間は見られないので,天気予報番組などではもっぱら赤外画像が使われています。

 気象衛星写真では,雲はもちろんのこと雪,海氷,潮目,陸地が識別できます。また,雲の動きから,大気の流れを見ることができます。温度差のないものは赤外画像では区別がつきませんし,雲の中,雲の下にあるものも見えません。

snow&sea ice


 これは1998年2月24日の北海道付近の可視画像です。オホーツク海を覆っているのは大部分が流氷です。また,北海道の平野部が白いのは積雪です。

snow&sea ice


 これは1998年1月24日の日本付近の赤外画像です。冬型の気圧配置のため,日本海や東シナ海に筋状の雲が出ているのが分かります。日本や大陸が白いのは雪が積もっているためではなく,陸地の温度が低いため白く写っています。一方,海は陸地に比べて表面温度が高いため,黒く写っています。

Tss VIS


 これは1998年2月23日の日本付近の赤外画像と可視画像です。上の赤外画像よりも温度の高い領域の分解能が上がるように階調を変えています。可視画像で見て雲がない三陸沿岸から千葉県の東にかけて白くなっており,親潮が南下しているのが分かります。一方,日本の南岸は暖流が流れており,銚子沖にはっきりとした潮目(海面水温の境目)があるのが分かります。

 気象衛星画像の特殊な使い方として,台風の中心気圧の推定という方があります。過去の数多くの台風の雲のパターンと台風の中心気圧との関係が調べられており,台風の雲パターンから台風の中心気圧が推定できるというわけです。例えば,眼がはっきりした台風の方が眼のない台風よりも中心気圧が低いことが知られています。

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