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傾圧不安定と低気圧



   高層天気図を見ると、大気の流れは緯度線に沿って同心円状に流れてはおらず、南北に蛇行しています。

北半球天気図
2000年4月7日12UTC 北半球天気図

 このような蛇行はどうしておきるのでしょうか。少し長くなりますが、ゆっくり説明します。

 地球は、その名のとおり球の形をしています。この球に光を当てると、赤道付近では地面に対し垂直に光が当たるのに対し、北極や南極に近づくと光は地面に対し斜めに当たることになります。

日射量の差

 このため、地面表面積あたりの日光の当たる量が赤道付近のほうが多いため、赤道付近の温度は高く、極に近づくに従って低くなります。

 また、大気の温度は一般に地表付近ほど温度が高いですから、北半球における対流圏の温度分布をおおざっぱに表現すると下の図のようになります。

等温面

 空気は温度が高いほど膨らみます(高校で習った気体の状態方程式:pV=nRT を思い出す方も多いでしょう)ので、地上の気圧が同じだとしても、南の方が等圧面の高度は高く、北の方は等圧面の高度は低くなります。

等圧面

 この状態は不安定ですので、地球が回転していなければ暖気が北上、寒気が南下してすぐに解消してしまいますが、コリオリ力と気圧傾度力がつりあって、風が等圧線に平行に吹くため、このような状態は維持されます。

 等圧面の傾きを「気圧傾度」と言います。上空ほど気圧傾度が急となっていることが分かります。気圧傾度が急なほど風は強く吹きますので、上空ほど強い風が吹いていることになります。

 等温面の図と等圧面の図を重ねると下の左図ようになり、等高度における等圧線と等温線を描くと下の右図のようになります。

傾圧 傾圧

 このように、等圧面と等温面が平行でない状態を「傾圧」性があると言い、等圧面と等温面が数多く交わる(等圧面上に等温線が沢山描かれる)状態を傾圧性が強いと言います。

 等圧面において等温線が混み合っているということは、南北の温度差が大きいということです。このような状態は下の水槽の左図のような状態と考えることもできるでしょう

水槽 水槽2

 この状態は「不安定」ですから、中の仕切りを取ると右図のように変化します。
 地球上の大気も同じように「不安定」な状態となり、南の暖かい空気(暖気)は北へ、北の冷たい空気(寒気)は南へ移動します。ただ、地球は回転しているために水槽のようにはならず、暖気は気圧の谷の東側を通りながら上昇し、寒気は気圧の谷の西側を通りながら下降することになります。

 結果として、同心円状に流れていた東西の流れは蛇行をはじめることになります。「傾圧」が強まって流れが「不安定」になることから、このように流れが波打つことを「傾圧不安定波」と呼びます。

 図から分かるように、傾圧性が強いと、上空ほど気圧傾度が大きくなります。そのため上空ほど風がどんどん強くなります。このことから、傾圧不安定のことを「シアー不安定」と呼ぶこともあります。

 さて、このような傾圧不安定波が上空で発生しているとき、地上ではどのようなことが起こるでしょうか。

 気圧の谷の東側で暖気が北上し、気圧の谷の西側で寒気が南下することから、下図のように気圧の谷の軸は下層へ行くに従って東にずれ、その軸が地上に達したところには低気圧ができることになります。

断面図
発達しつつある偏西風波動の東西鉛直断面の模式図
(「一般気象学」小倉義光著 東京大学出版会より)

 低気圧の東側では暖気が北上し温暖前線ができ、低気圧の西側では寒気が南下して寒冷前線ができます。

 つまり、温帯低気圧や温暖前線・寒冷前線は「傾圧不安定波」が発生したときに地上で観測される現象で、南北の温度差を解消しようとして発生する現象であると言うことができます。


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