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平成27年台風第12号


 
 平成27年台風第12号は西経域からやってきた熱帯低気圧で、その後衰弱してからTD(Tropical Depressin)になり、再び台風になったりとなかなか独特な動きと活動をしたのでまとめてみました。
(「熱帯低気圧」には、台風やTDの総称としての意味と、台風よりも風が弱いTDという意味がありますが、このページでは前者の意味で使用します。)


 7月11日00UTC 北中部太平洋(11.4N、172.6W)で風速35ktとホノルルにあるCENTRAL PACIFIC HURRICANE CENTERが解析し、
TDからTS(Tropical Storm)に格上げ、Halolaと命名する。

 北中部太平洋の熱帯低気圧の名称はホノルルのハリケーンセンターが管理する表を使っており、
表の下の説明にあるとおり、その年の最初がAから始まるわけではないので、
今年何番目の熱帯低気圧なのかは名称だけでは分かりません(実際には今年この海域の第2号)。
 ホノルルのハリケーンセンターの命名は人名を使っていますが、その名称はハワイっぽい名前になっています
(大陸のアメリカ人にも読みづらいのかカッコ内に読み方が記載されている)。

 7月12日06UTC 11.6N、177.6W、最大風速50ktと解析。
北中部太平洋の熱帯低気圧にはSTS(Severe Tropical Storm)というランクがない。
64kt以上でHurricaneと呼ぶことになっているため、この時点ではHurricaneではない。

 7月12日18UTC 125.N、179.6W、最大風速 50kt。日付変更線へ接近。

 7月13日00UTC 北西太平洋へ(13.0N、179.6E)進む。
気象庁は最大風速50kt、中心気圧990hPaと解析。
ランクはSTSで、日本ではTS以上を「台風」と呼ぶのでこの時点で台風第12号発生。

 西経域にある熱帯低気圧が東経域に入って台風となったものは、
1951年から2015年までに今回の台風第12号を含めて31個あります。
 内訳は次のとおり
 西経域で既にTS以上であったもの 20個
 西経域でTDであったが、東経域に入った時点で台風(TS)となったもの 3個
 西経域から東経域にTDで入り、後に台風(TS)となったもの 8個
 前回は昨年の台風第13号でした。
平成26年台風第13号の経路図はこちらから

 7月16日18UTC 18.7N、164.7EでTSへ降格。

 7月18日06UTC 17N、157EでTDへ降格。気象庁は熱帯低気圧として解析を継続。

 台風がTDに降格した時の気象衛星画像を見てみましょう。
 7月17日18UTCから7月18日06UTCまでの気象衛星画像(赤外)

 台風が熱帯低気圧に弱まるのは、上陸して地表面からの水蒸気の補給が途絶えたときや、
海面水温の低い海域に来て熱と水蒸気の補給が途絶えたときなどですが、
この降格した場所は海面水温が30度近い非常に暖かい海の上でした。

 7月18日の北西太平洋の海面水温(気象庁HPより

 それでは、なぜ台風は弱まったのでしょうか。
 ここは海上で観測点もなく、詳細な解析は困難ですが、
中・上層の水蒸気の動きを観察できる気象衛星の水蒸気画像が一つのヒントを与えてくれます。

 7月17日18UTCから7月18日06UTCまでの気象衛星画像(水蒸気)

 この画像を見ると台風の北東側に渦が見えますが、
これは上空の寒冷渦で中心付近が黒いことから乾燥している事がわかります。
また、寒冷渦の西側にも乾燥した黒い帯状の領域があり、
それが台風の中心付近に向かっているように見えます。
台風は大量の水蒸気の集まりでできていますので、
そこに乾燥した空気が入れば当然台風は衰弱すると思われいます。
断定はできませんが、これが台風を衰弱させた原因と私は考えます。

 西経域から東経域に入ってTDに衰弱してから再び台風に復活したのは、
1972年の台風第28号と1994年の台風第33号の2つしかありません。
 どちらも、10月中旬以降の台風も終わりのシーズンで海面水温もあまり高くありませんので、
今回のような衰弱・復活は大変珍しい事例なのかもしれません。

 7月19日06UTC 19.0N、151.6E、最大風速30kt。24時間以内に最大風速35ktと予想。
 同じTDとしてずっと解析してきたので一連の熱帯低気圧と判断し、
解析予報報(RSMC TROPICAL CYCLONE ADVISORY:WTPQ20)では、Halolaをそのまま使用。

 7月20日00UTC 21.0N、148.3E、最大風速35ktでTSへ格上げ。台風第12号として復活。

 過去にも一度TDに降格して再度台風に復活した台風はいくつもあります。
復活台風のリストはこちら(デジタル台風から)。

 この表を見るとわかりますが、1982年台風第6号はTESSとVALという二つの名前を持ちます。
 これは、一度TDに降格した台風第6号(TESS)を再び台風に復活させた際に、
気象庁は一連のものとして台風番号を継続させましたが、
当時命名権を持っていた米軍(JTWC:グアム)が別の現象として、新たな台風名をつけたものです。
 1979年から男性と女性の名称を交互につけていましたので、
この台風は女性から男性へ性転換したと、当時は一部気象関係者の間で話題になりました。

 7月26日09UTC 32.9N、129.7E 最大風速40kt。

 7月26日0930UTC頃 西海市付近を通過。

 7月26日10UTC 33.2N、129.8E 最大風速40kt。

 7月26日10UTC頃 佐世保市付近に上陸。
 台風第12号は、西経域から越境し、TDに衰弱してから復活し、
さらに日本に上陸までした初めての台風となりました。

 7月26日12UTC 34N、130E TDへ降格。



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