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筋状の雲と一口に言っても・・・

 2001年11月27日。11月としては非常に強い寒気が日本付近に入り、稚内では上空約5100mの気温が−40.5℃まで下がりました。日本付近は西高東低の冬型の気圧配置になり、日本付近にはいわゆる「筋状の雲」が出ています。

 なぜ「いわゆる『筋状の雲』」と呼ぶのかというと、「筋雲(すじぐも)」というのは、地上から見て筋状に見える雲、即ち巻雲のことだからです。一方、気象衛星から見える「筋状の雲」は巻雲ではなく、積雲や積乱雲が連なっているために筋状に見えるわけです。

 この筋状の雲にも色々な発生原因や形の原因があります。
 同じ時間の衛星写真の中で、少しずつ様子が違う雲をピックアップしてみましょう。

2001年11月27日12時可視画像
2001年11月27日12時(日本時間)可視画像

 まず、赤い線で囲まれたA領域と青い線で囲まれたB領域を比べてみましょう。地上の等圧線から、どちらの領域でも風はほぼ北西の風向であることが推察されます。B領域ではほぼその風向に沿った筋になっていますが、A領域では風向に直交する筋になっています。B領域の雲を"Longitudinal mode"、A領域の雲を"Transverse mode"と呼びます。このような違いはどうしてできるのでしょう?

 両方の領域の雲頂の温度は約−12〜−13℃で、ほぼ700hPaの高度であることが分かります。700hPaの風向を見てみましょう。

2001年11月27日00時700hPa
2001年11月27日09時(日本時間)700hPa

 B領域では700hPaでも西北西の風が吹いているのに対し、A領域では西〜西南西の風が吹いていることが分かります。要するにB領域では上層も下層もほぼ同じ風向の風が吹いているのに対し、A領域では下層と上層で風向が異なり、筋は上層の風向に沿っているように見えます。これが、"Transverse mode"ができる原因と言われています。

 北海道内陸部に見えるC領域の雲も風の流れに直交する"Transverse mode"です。ところが、この領域では下層も上層も風向はほぼ西です。この雲の雲頂温度は約−6℃であまり高度は高くありません。これは、北海道の脊梁山脈の風下側で出来る「山岳波」によって発生している雲と考えられます。

 D領域の雲も"Transverse mode"です。雲頂温度も約ー3℃であまり高度は高くありません。せいぜい、2000mくらいの高さでしょう。さらにこの雲の風上側には山もありません。850hPaの天気図を見てみましょう。

2001年11月27日00時850hPa
2001年11月27日09時(日本時間)850hPa

 特徴的なのは、850hPaの等高度線を見ると、等高度線の間隔が広くなっており、風が比較的弱いことが推察されます。このように、比較的風が弱い時も雲頂の低い"Transverse mode"の筋状の雲が発生することがあるようです。

 E領域には一筋の雲があります。しかも、これは日本海から連なったものではなく、一度筋状の雲が消えた後に、太平洋側に出てすぐに再び発生しています。この筋の上流には見て分かるように富士山があります。富士山の風下に空気の収束、もしくは山岳波が発生し、それをきっかけとして筋状の雲が発生していると考えられます。

 このように、一枚の衛星写真に写っている同じような雲でもその性質はそれぞれ随分違います。これらの発生原因やその形の出来ている理由が全て説明できた時、気象衛星画像と気象を理解したと言えるのでしょう。


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