湘南お天気相談所
【WEB内検索】単語区切り:スペース

AND OR

トップ 今日の天気(blog) お天気の知識 ひまわり学習 ツッコミ天気予報の恋人 リンク集 掲示板

5月 寒冷渦


 5月の前半は低気圧が次々と日本付近を通りました。5月8日には非常に発達した低気圧が日本海を通り、典型的なメイ・ストームとなりました。

 5月ころまでは北極付近の寒気が降りて来て、南の湿った空気との間で低気圧を非常に発達させることがあります。これが、メイ・ストームです。

GMS050800UTC
1997年5月8日00UTC 赤外画像

SURFACE MAP
1997年5月8日00UTC 地上天気図

 今年の5月27日にも日本付近で低気圧が非常に発達し、関東地方の各地で暴風警報が発表されましたが、残念なことに被害に合われた方が少なからず出ました。

 ビデオを見続けていると、5月16日ころに朝鮮半島の北に回転する雲渦が現れるます。その後5月28日に解消するまで、ずっと日本海や朝鮮半島付近に雲渦が現れては消える状態が続きました。

GMS052406UTC
1997年5月24日06UTC 可視画像

SURFACE MAP
1997年5月24日06UTC 地上天気図

 この雲渦は、先月も説明した寒冷渦ですが、その南東象限では南西から流れ込む暖気との境目で大気の状態が不安定になり、低気圧が発生したり、雷雲が発達したりしています。地上天気図で見ると低気圧も前線もないところに、たくさんの雲が発生している(上の図の赤い線で囲んだ領域)点に注目してください。また、寒冷渦の直下でも大気の状態が不安定になり、雷雲が発達します。

500hPa MAP
1997年5月8日00UTC 500hPa天気図

850hPa MAP
1997年5月8日00UTC 850hPa天気図

 上の二つの図を見てください。上の図は500hPa(上空約5700m)の天気図、下の図は850hPa(上空約1500m)の天気図です。赤い線はそれぞれマイナス18度と6度で、朝鮮半島から日本海にかけては寒気に覆われていることがわかります。
 850hPaで緑色に塗られているところは、気温と露点の差が3度未満、要するに湿度の高い領域です。

 福岡の850hPaでの気温を見てみると、6.8度で露点との差は1.1度。この850hPaにある空気の固まりを断熱的に500hPaの高さまで持ち上げるとすると、その気温はマイナス19.8度になります。
 500hPaの気温はマイナス20.1度ですから、それよりも温度が高いことになり、温度が高いということは軽いということですから、ここまで持ち上げられた空気の固まりはさらに上昇することになります。
 このような状態を「大気の状態が不安定」というわけです。また、このように850hPaの空気の固まりを500hPaまで断熱的に持ち上げて、そのときの500hPaの温度との差をとったものを「シュワルターの安定指数」といいます。

 大気の状態が不安定の時には、大雨、降雹などがあり、それに伴って竜巻やダウン・バーストが発生したりします。

 1997年のこの寒冷渦に覆われている間、所沢、むつ、彦根、舞鶴、などで雹が降り大きな被害を出しました。

 また、寒冷渦が解消する直前には、上空だけではなく下層まで寒気に覆われますので、寒の戻りとなり、晩霜の被害が出ることもあります。

 一方、寒冷渦が東に去る28日にはルソン島の東にある雲渦が台風4号になりました。寒冷渦の南にある雲の帯の南側は暖かい熱帯気団だということがこれで分かります。


4月のページへ戻る6月のページへ行く
トップ 今日の天気(blog) お天気の知識 ひまわり学習 ツッコミ天気予報の恋人 リンク集 掲示板|